30代でゲイでHIVで

まずは自分の記録のため、いつかは人の役にたてると良いなと思います。

保健所で検査結果をきく

検体採取をしてからちょうど1週間後、ほぼ同じ時間の夕刻。
1週間前と同じように、フロアには他に誰もいなかった。

今回は問診票の記入は必要ないので番号札だけ取ろうと思った時、1週間前に問診と採血を担当していただいた時と同じ保健師(ベテランの女性)の方が部屋の中から出て、中へどうぞと案内してくれた。
前回は入ってすぐの部屋で問診と採血をしたので、そこで結果を聞くものと思っていたら、

「結果は奥の部屋でお伝えするので。」

と、ずいぶん奥の方の部屋まで誘導された。
のちに、この対応は陰性の方にはされないことだったと知る。

 

「医師が来るので、しばらくお待ちください。」と告げられる。

この時ほんの少しだけ、これはもしかして?という予感がしたけれど、ポカンと待っていたと思う。横に立つ保健師から、先週とは違う何とも言えない緊張感が伝わってきたのである。長く感じた。

 

ほどなくして年配の男性医師が部屋に来て、私が持っていた半券と結果の紙とを医師と保健師が慎重に照合し、医師がそれらの紙を持って私の面前に座り、

「あなたの結果はこうでした。」

と提示し、

HIVと梅毒の検査陽性でした。」と説明をしはじめた。

 

正直、医師からはどんな話をされたかあまり覚えていない。ただ、早く今隣に立っている保健師と話しをしたいと思っていたことだけは覚えている。

「この後の対応等については、看護師から説明しますので、私は失礼します。」と言って医師はその場を後にした。

あぁ保健師は看護師なんだ・・・ と、どうでも良いことが頭に浮かんだことを覚えている。きっと私なりに混乱して情報の整理が追い付いていなかったのだと思う。

 

保健師は慎重に言葉を選びながら、優しく力強く話をしてくれて、聞いてくれた。

色々な話を聞いたけど、要するに保健所はHIV陽性の場合は、確実に医療機関につなぎたいということのようである。もちろんそのために無料で検査を実施しているのである。陽性者の命を守り、またさらなる感染を広げないために。

 

結果を受け入れられず、連絡が途絶えてしまうこともあるようだ。自暴自棄になってしまう人もいるのだろう。
同じ自治体内にある、指定の医療機関に保健所から予約を入れ、その当日保健師と病院で待ち合わせて、確実に受診したことを見届けたいという。(その場合、紹介状も本人には手渡さず、病院に直接保健師が持ち込むのだそう。)

もちろん平日昼間になるので、仕事の都合もあるが、何とか受診できそうな曜日と時間を伝え、病院の予約をお願いした。時間的に翌日朝に予約結果についで電話で連絡をするということなった。

 

個人情報の取扱いをとにかく慎重にしたいようで、「顔も名前も覚えませんから、連絡先を教えてほしい。」と言われましたが、案外この時点では冷静にこの後のことを考え始めていたので、

あっさりと、名前も電話番号もメールアドレスも伝えて、淡々と聞きたいことを質問した。

 

たまたま、私はある友人からHIV陽性であることをカミングアウトされた経験があり、ある程度の知識を持っていて、いち早く医療機関で診察を受けることの重要さを知っていたからである。この話はいつか別の機会にしたいと思う。

 

保健師からは、「あなたのように冷静に話を聞き、連絡先をすんなりと教えてくれたのは初めてです。」と言われた。

この時は、ハルトのことが心配で仕方なく、自分の体のことを考える余裕がなかった。

 

帰り際、「恋人に説明するときに、何か証拠となるものが必要ならば、規則で結果の紙を渡すことはできないですが、この用紙の写真を撮っても構わない。」と、保健師から提案いただいたため、そうさせてもらった。

 

帰り際、ふと思うことがあって、

「今後私がここへ来なければいけないことはありますか?」

と聞いたら、「ありません。」と答えていただいた。