新しい世界のはじまり
恋人のハルトに、HIV陽性を告知した翌朝、
休日だったのでいつものように朝食を用意して穏やかな1日が始まった。
でも、どうしたって昨日までとは違う。
何を変えなければいけないのか、、、そんなことを考えていた。
昼過ぎまでハルトと過ごす時間があるのだが、どこかへ出かけようという話になった。今年になって数々の神社を何も考えずに参っていた。今なら猛烈に神頼みをしたいところだが、なんか神頼みも違う気がした。でも何かにすがりたい気持ちではあった。
昨日の夜、将来はハルトと家族になれると良いなと話をした。
そうだ家族の場所に行こう ということで、長らく行っていなかった先祖のお墓参りに一緒に行くことにした。
一緒に墓石を掃除し、花を供えて、手を合わせただけのことだが とても幸せに感じた。
1番大切にするのは、神様ではなくご先祖様だ とどこかで聞いたような気もする。
その後、見晴らしの良い公園の展望台にのぼった。
ハルトと出会ってから今まで 「病気のことがなければ楽しくて幸せなことしかなかったなぁ」 とハルトはいう。 それを聞いたら嬉しいやら悔しいやらで今度は僕がオロオロと泣いてしまった。 でもハルトの前ではこれ以降泣かないようにしようと心に決めた。
出会ってから昨日まではもちろんとても素敵な日々だったけど、今日からは新しくまた素晴らしい日々が始まるのだなと思った。
その日の夜、再びハルトに会い、
一緒に一冊のノートを作った。
出会ってから今日までに起きたことを時系列に書き出してみた。簡単な日記のように。
そして最初のページにはこれからの決意というか大切にすることを書いた。
最後のページには将来2人で向かう理想を書いた。
これからもこのノートにたくさんの出来事を書いていこうと思う。
もう一つ変えた生活習慣がある。それまで布製マスクを格好だけつけていたが、使い捨てのサージカルマスクを使うことにした。
どちらも紙頼みということか。